虐待サバイバー コマクサの憂鬱

虐待サバイバーの回復への道

早めに家を出て行ってくれ。

帰って来るのは盆暮れだけでいい。

 

毎秋、2、3日帰って来ていた長女に、転職を決める際にそう言ったのは、私。

正直、やっぱり煩わしかった。

気を使うことも多かったし。

 

しかし、転職がスッキリ通って、引越しの準備で長女のモノがどんどん運び出されると、それはそれで寂しい。本当にわがままな親である。

 

引越しは25日。

あと少し、仲良く過ごしたいとおもう。

次女が税金を滞納してて、私に電話がきた。

あの子は、嫌な電話には出ないから。

連絡が取れないけれど、このままなら強制執行になります、伝えてください、って。

 

うんざりしてる。

 

しばらく次女には会いたくない。

希死念慮がまた兆してる。

 

先代とのことが、ずっと私をぽかぽか温めてくれていたのに。

また「シニタイ」「もう疲れた」が出てきてる。

先代の言葉

先代と話したことが、まだ心で熱を持っていて、心がぽかぽかしてる。あったかい。

 

昔は、ひたすらに電話を掛け続けていて、やっと繋がって話しが出来ても、切って三分後には狂おしく淋しくなって、また電話を掛け続けていた。

 

「お前はシニタイばかり言っていて、この電話を逃したら本当にやってしまいそうで、何度も会議を抜け出したり、電車を見送ったりして取っていたよ。

(それでも)俺は電話番号を変えなかった」

 

と言った。

すごい電話の量だから、先代の業務の妨げになっていて、周囲の人に心配され、「電話番号変えたらどうですか?」って言われてたんだろうなぁ。

 

「ストーカーじみていましたものね」

 

というと、

 

「じみてたんじゃない、ストーカーだよ!」

 

と強い声で言われ、

 

「ですよねー」

 

と笑った。

実際、先代が警察に相談したら、接近禁止令が出たと思う。それくらい酷かった。

先代、よく耐えてくださったなぁ。電話番号変えられてたら狂乱してただろうなぁ。

そんな話のあと、

 

「俺、最近よく思うんだよ。

好き勝手に生きて来たよなぁって。誰かのために寝ずに車走らせたし、飛んで行ったり。

全部、俺が勝手にしたことなんだよなぁ」

 

何度も何度も人を助けてきたことを、そんな風に言う。

信者は誰もが、先代にこんなに良くしてもらったのは自分だけだと思っている。実際、お寺のお手伝いをしている時に、先代は私のためにこんなことまでしてくれたのよ、と、特別に優しくしてもらった経験を話す人をたくさん見た。

それを「人の為」じゃなくて、「自分の勝手」という。どこまでも無私の人だなぁ、と思う。

 

「あっちこっち飛び回ってて、家族には淋しい思いをさせたのかもなぁ」

 

以前、先代が離婚された時に

 

「奥様も淋しかったんじゃないですか?」

 

と言ったら、

 

「俺が悪いと言うのか!?」

 

と大きな声をだした先代が、自分からそれを言う。

そして

 

「みんなが俺を通してじゃなく、直接、仏と繋がれればいいと思うんだ」

 

いつも仰る言葉を口にした。

思いはブレずに、まだ先代の中にあるんだなぁ、と思った。

全部俺の勝手だと言い、誰もが直接仏と繋がれればいい、という。

そんな先代を、改めて凄いなぁ、と思った一日でした。

先代

あのね、昨日、先代に会って頂いたの。

で、誕生日プレゼントのマフラーを贈ったら、とても喜んでくださって。

すぐに巻いてくださって

「手編みのマフラーなんて、子どもっぽいですから、箪笥の肥やしにしてください」

と言っても、

「いやいや、使うよ!」

って。

とても嬉しかった。

 

そしてね、今回お会いしたら、手を握りたい、触れたいって気持ちが強くてね。

「私のわがままを、させてくださいませんか?

隣の席に座って、手を握っていいですか?」

と言うと、

「お前、何歳になったんだよ」

ちょっと呆れたように言い、いきなり時計を見始めて

「あ、もうお時間がないですか?」

って聞いたら、

「いや、何秒にしようかと思って」

と言うので、

「秒ですか!」

と言いつつ、隣に座らせてくださって。

手を握って。暖かくて、気持ちが和らいで。

いろいろ、ポツポツと話しながら。

 

「四日前に、ぽっと『死にたくない』って思ったんです」

って言ったら、

「え、お前、今なんて言った?

顔をあげて、俺の目を見て言ってみろ」

って言って、同じことを目を見ながら言ったら、

「やったな!!」

って喜んでくださって。

頭をパシパシ叩いて、お前、やったな!って、何度も繰り返して。

「死にたいばかり言って、電話を何度もかけてきて。その電話にでないと、本当にやってしまいそうで、俺は会議を出てまで電話をとって。

お前、ようやくそう思えたのか!」

って。

 

すっごく喜んでくださって。

 

「よくそこまで行ったよ。

俺の勝ちだな!

この前の事故だって守られたんだ、お前にまだ生きろって言われてるんだよ」

 

「頑張ったな、よく頑張った」

 

って。

手を強く握ってくれて。

私は泣いてしまって。

 

とてもとても喜んで下さる先代の姿が嬉しくて。

とても暖かい気持ちが流れてきて。

 

そんな、天国に行ったような、幸せな時間を過ごしたの。

まだ余韻がある…。

こんな時間が、先代と持つことが出来て、本当に本当に嬉しい。

 

そんなでした。