虐待サバイバー コマクサの憂鬱

虐待サバイバーの回復への道

S先輩

もう一つ、印象的な夢。

 

会社の先輩で、小説家になったSさんが亡くなったと

知らせが入る。

 

同僚はお葬式に行ってきた、というが

私はまだなので、急いで式場へ行く。

祭壇の前に棺があって、

先輩ただちょっと仮眠を取ってるだけ、

そんな風に横たわっている。

 

今にも起きだしそうな顔をずっと見てると

パチッと目を開ける。

俯き加減に目を閉じていたのが

顔の向きもこちら側に少し傾ける。

 

「Sさんの目が開いたよ!」

 

私が言うと同僚が寄ってきて

私の背後からSさんを見る。

あぁ、本当だ、目を開いてこっち見てた方が

やっぱりSさんらしいね」

 

ね。俯いてるより、ずっとSさんらしいよね、

と言い合う。

 

けれどSさんは開けた瞳をギラギラさせ

棺の中でゆらゆらと立ち上がり、

駆け出して行ってしまう。

 

 

古代の剣を大切にしまおうとしている人の

箱から無言で奪い、その剣で鳥居などを

斬りつける。

剣道の練習をしている人々に紛れてしまう。

無言で暴れ続けるSさん。

だけど、剣の持ち主の老人は

 

「おお」

 

と箱を見て呟く。

 

「なんと剣の実態はまだ此処にあります。

あれは霊剣なのですな」

 

それなら本当には斬れないだろうね、と

私たちは何とはなしにほっとする。