虐待サバイバー コマクサの憂鬱

虐待サバイバーの回復への道

レオタード用のショーツ

中学校代表で、地域の創作ダンス大会に出場する。

それは、三年生のチームを差し置いての

抜擢だった。

 

「地域大会だって!」

と、廊下ではしゃいで騒いでいたら、

三年生の先輩女子から、

「二年生が出ることになったんだって」

とすれ違いざまに嫌そうに言われた。

 

そうだ、傷ついている人もいるんだ、と、

はしゃいでいた自分を反省したりした。

 

でも、自分たちでもいい作品ができたと思っていたし、

大きな会場で踊れることは、単純に嬉しかった。

 

先生からは、レオタードを買うことと、

もう一つ、レオタード用のショーツを買うように

言われた。

母に伝え、一緒にスポーツ用品店に行った。

母は、レオタードは買ってくれたけれど、

ショーツは、必要ない、と言って

買ってくれなかった。

 

その時は、そういうものかな?

先生は買うように言っていたけれど、

必要ないものなのかな、と思った。

「絶対必要、買って」

と、わがままを言うことはできなかった。

 

 

大会当日、

普通のパンツの裾を折り込むようにして、

レオタードの内側に押し込んだ。

ぱっと見はレオタードに隠れたように見えて、

これでいけるんじゃないか、と、思った。

けれど、それはやっぱり甘い考えだった。

激しく踊っているうちに、

パンツはレオタードからはみ出して

白く線を描いた。

 

会場で一人だけ、レオタードから

パンツをはみ出して踊った。

・・・みじめだった。

 

 

大会でもいい線はいったようだけれど

入賞することはできず、

県大会まで進むことはできなかった。

先生に、

「残念だったね。でも、評価はよかったんだよ」

と慰められた。

 

デンボな私を嫌う母は、

大会を見に来てはくれなかった。

 

 

 

中学校代表にもなった創作ダンスだったから、

その年の文化祭でも、踊ることになった。

私は、また普通のパンツで踊った。

そして、また白い線ははみ出してきた。

同じ中学の先輩や後輩、同級生の前で。

それは、大会の時より恥ずかしいことだった。

そして、高校に進学してからも、

同じ中学から入学してきた後輩に、

 

「あの先輩はレオタードからパンツをはみ出して

舞台で創作ダンスを踊っていたんだよ」

 

と、言いふらされた。

人の口に戸は立てられぬ、ということを

人生で初めて知った時だった。