虐待サバイバー コマクサの憂鬱

虐待サバイバーの回復への道

オットもうつ病に

オットがうつ病だと言うことがわかりました。

 

うつ状態にあるとは感じていて

注意深く様子を見ていたのだけど、

寝つきがいいこと、早朝覚醒もないことで

ちょっと楽観視し過ぎてました。

 

先週の金曜日、会社から帰ってきて

すぐに大きなため息を吐いた。

「やっと週末だよ?」

と言うと、

「もう(今から)月曜日が憂鬱」

と言った。

 

これはまずいかな、と思った。

 

土曜日にテレビを流して観てたら

葛飾北斎の絵のことをやっていて、

小布施に最期の大作があるとのことで

日曜に観に行こう、ということになった。

オットから言い出したことで、

すぐに小布施を検索し始めたし、

それで気晴らしになるといいな、と思った。

 

日曜、朝早めに出て山道を走る。

途中、トイレに寄ったドライブインで、

私よりも早めに車のそばまで戻ったオットが

なにやら変な挙動をしている。

? と思いながら近づくと、

「手が震えてきた」

と言う。

 

そういえば何日か前も、

会社で吐き気を感じた、と言っていた。

喉に何かが詰まっていて、咳をすると

えずいて吐きそうになるのだ、と。

ただそれを言ったのは一日だけで

その後、ひと言も言わなかったから

一過性のものかと思っていた。

 

 

喉に何かが詰まっていてえずく。

この症状が私に憑依を思い出させていた。

朔日講という憑依体質の人を集めたお講で、

憑依されている時にお経を挙げられると

みんなえずいていたのだった。

 

いつもお気楽ご機嫌だったオットが

今の会社に行ってから、急にうつ状態

なったのも、私には不思議だったし、

オットも

「もう仕事は覚えたし、なんでこんなに

憂鬱になるのか、わからないんだよ」

と言った。

なので、もしかしたら憑依かもよ?と言った。

すると、長いドライブの間にオットは、

その会社に勤めて長い人から、

自分が勤めた四年間で二人の人がおかしくなった、

と聞いたことを教えてくれた。

二人とも最初は普通だったのに、

徐々に独り言を言うようになり、

そのうち一人は最後叫ぶようになって

二人とも辞めていった、そうだ。

 

「住職に電話しよう」

と言った。

住職の電話は妖怪電話で、

こっちがなんともない時は繋がらないけど

悪い状態の時は不思議と繋がる。

一度電話して、繋がるようだったら

相談してみよう、と言った。

「会社に何かいるのかもしれない」

と。

 

車を路肩に停めてもらって電話する。

繋がらなかった。

誰かと電話中なのか、短いコール音で

留守電に変わってしまった。

そのまま、小布施まで行った。

峠道を九十九折りに走りながら、

私はどんな症状なのか、細かく聞いていた。

憑依じゃないとしても、

もう心療内科に連れて行こうと決めていた。

最初は乗り気じゃなかったオットも、

薬を飲めば少しは楽になるかな、

と、その気になってきた。

あんなにメンタル系の薬を嫌がっていたオットが

飲もうかな、と思うほどに辛いのだ、

ということがわかった。

 

小布施に着いて、もう一度住職に電話する。

またかけます、と留守電に残す。

オットは繋がらなければなんでもないんでしょ?

そんなに何度も掛けるのは違わない?と

ちょっと不服そうだった。

が、駐車場から少し歩いていると、

立て続けに不在通話の知らせがポロンポロンと

鳴った。全部住職からだった。

私が掛けて繋がらなかったあと、

圏外の山道を走っているとき、

何度も掛け直してくださっていたのだった。

「住職から電話掛かってきてたみたい」

私はそう言って、もう一度電話を掛けた。

繋がった。

「先日はありがとうございました」と

お礼を言う私の声に、固い声音で住職は答えた。

そんな話じゃないだろう?と言うようだった。

「オットがおかしくて、オットの会社でも

急に独り言を言い始めて辞めた人が

二人も居るそうなんです。

オットと話していただけますか?」

と言ってオットと電話を代わった。

オットは、え?俺が話すの?と慌てながら、

今の自分の状態を住職に伝えた。

「自分はそういうこと(鬱とか憑依とか)から

一番遠いところにいると思っていたのですが」

と前置きをして、今の自分の身体状況を語った。

住職は、

「その会社は辞めなさい」

と言った。

憑依云々への言及はなかったらしいけれど、

 

うつ病の、それも序章じゃない、

ほんちゃんのうつ病になっている。

身体症状も出ているのだから、

その会社は辞めて、少し休んだ方がいい。

今は仕事はたくさんあるから、

心配しないでそうした方がいいよ」

 

と、オットに断言したらしかった。

 

「そう背中を押して頂けたので

少し気持ちが楽になりました」

 

そう言って、オットは電話を切った。

憑依とは言われなかったよ、と私に言った。

でも、辞めるように言われたんでしょう?

と言うと、あの断言には救われるよね、

と言った。

「なる早で辞めて」

そう言っても、仕事には区切りというものがあるから、

と、まだすぐには辞めないらしい。

 

北斎は見て、

行こうと言っていた温泉は

「気力がない」

とオットが言って、入らずに、

帰路は私の運転で帰ってきた。

 

家に帰って、まだ、俺ほんとに鬱病かな、

というので、ネットにあったセルフチェックを

やってみたら、「中程度うつ」と出た。

(あぁ、もっと早くチェックするのだった)

 

「鬱だって。

それも軽度じゃない、中程度だよ。

そこまで進行してるんだよ」

と私は言った。

住職だって序章じゃないって言ったんでしょう? と。

 

 

とにかく、出来れば今週末、心療内科に連れて行く。

私が付いていたのに、こんなに悪くなるまで

静観してしまって、迂闊だった、と思った。

 

 

 

いろいろ、言葉を尽くして説得している。

あなたは意思が強いから、

身体症状に出てるんだよ、と言った。

私のように心が弱いと寝込むけど、

意思の力で動いちゃうから、身体に出る。

まだ動けるからって動き続けると

いつかほんとに壊れて、ぴくとも動けなくなるよ。

早い方がいい。その方が短い休暇で済むよ。

 

いろいろ言っても無理しようとするので、

最後には、

幸せになろうよ

と言った。

やっと子どもが巣立って、

親の葬式も出して、

なんの義務もないところまで来たんじゃない。

健康寿命なんて、あと十年かもしれないんだよ?

やっと私も元気になってきたのに。

一緒に、幸せになろうよ

そう、言った。

 

 

まずはオットがうつ病になっているということ。

それも中程度だということ。

しっかり受け止めて、病院に繋ごうと思う。