虐待サバイバー コマクサの憂鬱

虐待サバイバーの回復への道

住職との会話

今日、もう一度電話したら、また住職に電話が繋がった。

 

「どうした? 昨日はあれでおさまったかい?」

と訊く。

「オットはまだ自分がうつ病だと思いたくないみたいで」

と言うと、

うつ病じゃないよ。

ただ、もう“手が震える”という身体症状が出てるから、放っておくとそうなるよ、というだけで」

と仰る。

「会社は辞めた方がいいんですよね?」

「そうした方がいいと思うよ」

「会社にナニカいるんでしょうか?」

「なんにも、いないよ」

「じゃぁ、私がちゃんとお弔い出来てないとか、そういうことがあるのでしょうか?」

半分、泣きそうになりながら、そう尋ねる。

 

義母が亡くなってから、悪いことばかり起きる。

愛犬は突然死したし、長女に病気が見つかったし

次女の勤めているお店は頼りになる人が

次々と辞めるらしいし。

霊とか信じない娘たちが二人して、

今年の二月はお祓いに行こうとしてたらしい。

あんなに陽気だったオットも塞ぎこんでいるし

私は義母のお弔いをちゃんと出来ていないのではないか、

と心配になっていた。

 

お花はあげてる。

お水も毎日。

お題目も、三度。

でも、仏飯を供していなかったし、

そもそも義母は認知症で長い間ホームに居て

私たちはあまりお見舞いに行かなかった。

 

前回、住職とお話した時に、

義母を家族葬で送った、と言ったら、

一般論として、コロナが終わったら、

家族葬ももう一度考え直した方がいい、

と仰った。

親が(この世で)繋いだ縁を、

子どもが勝手に切ってしまっていいわけがない、

と言っていた。

私が(義母が亡くなるちょっと前に)

会社の先輩の三回忌に呼ばれて出てきた、

慕っていた先輩だったから嬉しかった、

と言ったから、その流れで仰ったのかもしれない。

でも、その言葉が引っかかっていた。

義母は十年以上(?)認知症だったから、

もうどのお友達とも切れていて、

と、言い訳を言う。

そのお友達にも連絡した方がよかった?

いろいろあって、まだ香典返しをしていないのも

責められているように感じた。

家に帰ってすぐに香典返しをしようと

心に決めた。

それなのに、家に帰ればオットが鬱鬱としていて

つい、一日伸ばしに延期していた。

それが、この小布施に行った日、

とうとう義母の兄弟からオットに電話が入った。

お返しが欲しいわけじゃない、

ただ届いたのかどうかもわからないから

戸惑っている、と言われたようだった。

私はそれを聞いて泣いてしまった。

義母の命日からずっと続いていた緊張が

限界に達した気がした。

 

「お香典返ししなくちゃね」

とオットには何度か言っていた。

が、オットも今の仕事(への憂鬱)が酷くて

何人か分からない住所を調べることも、

送る品物の大まかな金額も

なにも決めてくれなかった。

やんなきゃね、と言いつつ、一日伸ばしにして

とうとう親戚の方から嗜められた。

私が泣くと、オットはすぐにネットで調べて、

品物と割り振りを指定してくれた。

不明だった住所も調べてくれた。

そこまでしてくれれば、あとの注文は

私にも出来る。

今日の午前中に全部手配を終わらせた。

 

 

だけど、私のお弔いが足りないのかもしれない、

なにかダメなことがあって義母が怒っているのかもしれない。

そう思い始めると、もうそうとしか思えなくなった。

そもそも、認知症になったからと言って

ホームに入居させられたことが嫌だっただろう。

私が嫁に来たことで、自分が嫌な目にあったと

そう感じているのではないか?

あの日を境に嫌なことばかり起きるのは

全部、私の気配りが足りないせいじゃないのだろうか?

 

 

怖かった。

だから、半分泣くような気持ちで

恐る恐る、住職に尋ねた。

 

「なにを言ってるんだよ。

お前は自然の中に居て、楽しんでいればいいんだよ」

 

住職は、笑い飛ばしてくれた。

 

「楽しくしてろよ。

お前が苦しんでた時は、オットが支えてくれたんだ。

今度はお前の番だ。オットを支えろよ。

ストレスが無いように、お前は明るく居て

面倒を見てやれよ」

 

住職は、そう言った。

 

 

会社にも変なのはいない。

ご先祖も、特に怒ってはいない。

いろいろ重なったのは、ただの偶然。

 

私は楽しくしていていい。

陽気に、ご飯を作り、お風呂を沸かして

オットを支えていればそれでいい。

そう言ってもらえて、やっと少し落ち着いたのです。

 

 

今日は幾分、オットも気持ちが落ち着いているよう。

今週末には心療内科に行けるよう、

明日は電話を掛ける予定です。