虐待サバイバー コマクサの憂鬱

虐待サバイバーの回復への道

先代の言葉

先代と話したことが、まだ心で熱を持っていて、心がぽかぽかしてる。あったかい。

 

昔は、ひたすらに電話を掛け続けていて、やっと繋がって話しが出来ても、切って三分後には狂おしく淋しくなって、また電話を掛け続けていた。

 

「お前はシニタイばかり言っていて、この電話を逃したら本当にやってしまいそうで、何度も会議を抜け出したり、電車を見送ったりして取っていたよ。

(それでも)俺は電話番号を変えなかった」

 

と言った。

すごい電話の量だから、先代の業務の妨げになっていて、周囲の人に心配され、「電話番号変えたらどうですか?」って言われてたんだろうなぁ。

 

「ストーカーじみていましたものね」

 

というと、

 

「じみてたんじゃない、ストーカーだよ!」

 

と強い声で言われ、

 

「ですよねー」

 

と笑った。

実際、先代が警察に相談したら、接近禁止令が出たと思う。それくらい酷かった。

先代、よく耐えてくださったなぁ。電話番号変えられてたら狂乱してただろうなぁ。

そんな話のあと、

 

「俺、最近よく思うんだよ。

好き勝手に生きて来たよなぁって。誰かのために寝ずに車走らせたし、飛んで行ったり。

全部、俺が勝手にしたことなんだよなぁ」

 

何度も何度も人を助けてきたことを、そんな風に言う。

信者は誰もが、先代にこんなに良くしてもらったのは自分だけだと思っている。実際、お寺のお手伝いをしている時に、先代は私のためにこんなことまでしてくれたのよ、と、特別に優しくしてもらった経験を話す人をたくさん見た。

それを「人の為」じゃなくて、「自分の勝手」という。どこまでも無私の人だなぁ、と思う。

 

「あっちこっち飛び回ってて、家族には淋しい思いをさせたのかもなぁ」

 

以前、先代が離婚された時に

 

「奥様も淋しかったんじゃないですか?」

 

と言ったら、

 

「俺が悪いと言うのか!?」

 

と大きな声をだした先代が、自分からそれを言う。

そして

 

「みんなが俺を通してじゃなく、直接、仏と繋がれればいいと思うんだ」

 

いつも仰る言葉を口にした。

思いはブレずに、まだ先代の中にあるんだなぁ、と思った。

全部俺の勝手だと言い、誰もが直接仏と繋がれればいい、という。

そんな先代を、改めて凄いなぁ、と思った一日でした。