虐待サバイバー コマクサの憂鬱

虐待サバイバーの回復への道

初恋

中学一年生の時に、淡い初恋をした。

三年生の先輩。

 

出会いは微妙で、

まず、友達が三年生の男子と交際していた。

彼女は目鼻立ちが整った美人で、

入学してすぐに告白されて付き合うことに

なったらしい。

彼女の友達の私と、

彼氏の友達の先輩が、

二人がお昼休みデートをするときに、

人を近くに近寄らせないための

門番のような役を任されていた。

 

それで毎日のように二人で

所在なく立っているうちに、

話をするようになり、

いつか付き合うようになったのだった。

 

初めての恋だった。

交換日記を交わすようになり、

冬休みには友人カップルと一緒に

ブルデートをした。

 

交換日記ではなんでも話せるのに、

面と向かうと緊張して、

なんにも話せなかった。

自転車通学の学校だったので、

並んで自転車を走らせながら、

先輩が大きな声で話しかけてくれる。

だけど私は小さな声で頷くしか、

できない。

 

夜は電話で長い間お喋りをした。

 

両親は最初、黙認していてくれたけれど、

冬休みのダブルデートの後、

付き合うことを禁止された。

真剣な付き合いなら会わなくても続くだろう、

大人になるまで続いたら認める、

みたいなことを言った。

先輩の受験もあるのだから、

今は交際だなんだと浮かれている時じゃない、

とも言われた。

 

先輩に言うと、

「大人になったら結婚しよう、

迎えに行くよ」

と言った。

青い青春。

電話をやめ、会うのをやめ、

交換日記だけで想いを伝えあった。

 

 

なぜ急に交際を禁止されたのか、

当時の私は気づかなかったけれど、

両親は私の日記を盗み読みしていたから、

それで私が冬休みにその先輩と

ファーストキスをしたのを読んだのだと思う。

それで慌てて禁止してきた。

 

念願の高校にみごと合格した先輩は、

中学を卒業していった。

春休みの間は「海に行こう」と手紙が来たけれど、

一学期が終わるころには別れを告げられた。

淡い初恋だった。