弟が産まれてからは、
弟と両親で一家族を作っていて
私と兄はその周りを回る衛星のようだった。
兄の部屋と私の部屋は
ベランダで繋がっていて、
ある日、そのベランダに二人で立って
夕暮れの空を見上げていたことがあった。
生まれ変わったら何になりたい?
という話になって、
私は樹になりたい、と言い、
兄は風になりたい、と言った。
私はブラザーコンプレックスだった。
兄のことが好きだった。
もちろん、兄弟愛として。
そしてそれはあのことがあっても
ずっと変わらなかった。
変わらない自分が変だと思った。
それほど、兄のことが好きだった。