虐待サバイバー コマクサの憂鬱

虐待サバイバーの回復への道

虐待

性的虐待があるということ

それは一年くらい続いた。 誰にも相談出来なかったけれど、 誰も読まない自分の日記に、 「最近、お兄ちゃんが嫌いだ。 (夜に)来るから」 とだけ、書いた。 それが精一杯だった。 それが終わった時、私は全力でその出来事から逃げた。 暗い世界から、子ども…

私が悪いのか?

両親は私の部屋に内鍵をつけて安心していたけれど それは、あまり役には立たなかった。 何故なら、夏の暑い日、 エアコンもない部屋では、 窓を閉め切って寝ることが出来なかったからだった。 ふた部屋繋がっているベランダを通って 開けた窓から兄は入って…

母の叱責

親には、話せなかった。 話せば、怒られるのは私の方だと思っていた。 それは一年近く続いたけれど その中で暑い夏の日もあった。 ある夏の日、私は昼寝をしていた。 あまりに暑かったので、タオルケットも蹴飛ばして あられもない格好で寝ていたのだと思う…

性的虐待

それから、性的虐待が始まった。 夜中に兄が私の布団に入って来て触る。 パンツを脱がされ、局所を触られ、 あとはどんなことがあったか、 よく覚えていない。 最後まで行く前に、いつも逃げ出していた。 途中までは固まって寝たふりをするのだけれど 最後ま…

ベッドの足元の黒い影

プロレスごっこから暫くたったある夜、 二段ベッドの上の段に寝ている私の 足元に誰かが来た。 寝ぼけた頭で私は、 兄が何かいたずらを仕掛けにきたのかと思った。 その時、こちらも遊び心で 足をバタバタさせて撃退すればよかった、 と、後で何度も後悔した…

「ミステリという勿れ」で描かれた性的虐待

以下、ネタバレを含みます。 「ミステリという勿れ」最新話を観てない人は 気をつけてくださいね。 「ミステリという勿れ」第9話の最後で ライカが解離性同一障害だとわかった時 あ、これは性的虐待の話が出てくるな、 とわかった。 性的虐待を受けた子ども…

始まりは

その出来事の始まりは、ただの遊び。 それまでに何度も繰り返していた、 兄と二人のプロレスごっこだった。 場所は二階の、私と弟の部屋。 男の子のように育った私は 荒っぽい遊びも大好きだった。 大好きな兄の真似をして プラモデルも作ったし、ミニカー遊…

兄とのこと

弟が産まれてからは、 弟と両親で一家族を作っていて 私と兄はその周りを回る衛星のようだった。 兄の部屋と私の部屋は ベランダで繋がっていて、 ある日、そのベランダに二人で立って 夕暮れの空を見上げていたことがあった。 生まれ変わったら何になりたい…

お母さんの木

クラスの窓から、 校庭の向こう側にある大木が見えた。 私はその大木に 「お母さん」 と名前をつけて、 いつも呼びかけていた。 「お母さん、今日はこんなことがあったよ」 「お母さん、今日はいい一日だったよ」 毎日の報告と、 その時々の気持ちを語りかけ…

平和主義者

今、この状態で書くことに抵抗もありますが、 四十年前の話です。 当時、私は絶対戦争反対の平和主義者でした。 第二次世界大戦について興味を持って 「アンネの日記」も読んだし、 特攻や、原爆の悲劇に心をいため、 本土決戦を覚悟した日本政府の方針も 信…

ピンクのワンピース

私は、九州出身の父に似たのか 肌が色黒の方だった。 そして、顔立ちは、 小学校の新任の保険の先生に、 「あなた、俳優の松田優作にそっくり! 私、東京で看護婦をやっていた時、 松田優作さんの担当をやっていたから わかるの!」 と、興奮気味に声を掛け…

学校で得られた自己肯定感

先日、両親の私への対応は虐待だった、と オットと長女に訴えたとき、 長女は不思議そうに、 「でもママは活発な方だし、 なんなら出来る子だよね。 友達作るのも上手そうだし。 うつ病が長いのは知ってるけど そんなに自己肯定感を削がれていたの?」 と聞…

昨日の話 2

どうしてそんな、過去の虐待について 掘り起こし始めたの? とオットが聞くので 「障害年金を貰おうとしてるのが 後ろめたい、ということもあると思う」 と言った。 怠けてるだけで、本当は働けるんじゃないか。 働いていない主婦さんは、 なんのお金も年金…

昨日の話

昨日は長女とオットと、 焼き蟹をしながらワイワイと お酒を飲んでいた。 子ども時代の話になり、 私は両親から否定しかされなかったから 今も自分の軸が出来上がっていない、と言った。 オットと長女は、私から見て 自己肯定感の高い人なので、 他人からの…

教育虐待

父と母は、教育熱心だった。 たぶん、最初は、私たちの引っ越しが契機だったのだと思う。 千葉から茨城に引っ越した私たちは、 茨城での最初の授業に驚いた。 千葉ですでに習ったところだったのだ。 学習の進行速度がちょっと違ったのだと思う。 一度習った…

兄妹を取り合う両親

思えば、私たち兄妹は、 つねに両親に比べられて育ちました。 毎回、兄が贔屓されるというわけではなく、 両親の気分次第で、どちらかを 取り合うのです。 例えば、兄がテストで点数が良ければ、 「やっぱりお兄ちゃんは俺(私)似だ」 と、取り合うのです。 …

偽善者という烙印

私は小学高学年の時に 好きなフォークシンガーができました。 家族の影響ではない、自分だけのスター。 そういう対象を持つ時期だったのかもしれない。 一番仲の良かった友人は、 松山千春を好きだと言った。 二人でお小遣いを貯めて、 好きな歌手のシングル…

コマクサのくせに偉そうに

私は、集団の中から外れて 一人ぼっちになってる人や、 困っている人が気になる性分だ。 幼稚園の頃、一緒に園庭で遊ばず、 教室の壁にじっと座っている二人の子がいた。 軽く知的障害があった子だと思うのだけど とにかくいつも二人でボーっと座っていた。 …

デンボ

母とは、趣味嗜好が全く合わなかったのだと思う。 私は、(子ども時代)割と活発な方で、 人前に立つことが好きだった。 華やかなものに憧れたし、 自分もそうなりたいと思っていた。 で、小学校5、6年生の時に 運動会の行進の先頭に立つ、バトントワラーズ…

家事手伝いと、母との喧嘩

もうひとつ、私には仕事があった。 母の家事の手伝い。 これは、日曜日など週に一度だった。 廊下や玄関の掃除が仕事だった。 母の家事の手伝いは、女子である私だけの役目だった。 男兄弟の兄や弟はさせられていなかった。 私が子どもの頃は、まだ男女の役…

兄の迎えと、弟の寝かしつけ

子どものころ、 遊びに出かけて、門限になっても帰ってこない兄を、 迎えに行くのは、私の仕事だった。 兄が行っていそうな場所や友達の家を捜し歩き、 ピンポンを鳴らして兄を呼び出し、 「お母さんがもう帰ってきなさいって」 と伝える。 兄は、渋々、私と…

母の良き思い出

母のあたたかい思い出も書いてみる。 小さいころ、お風呂に入れてもらった時、 横抱きに抱えられて、頭を洗ってもらうのが大好きだった。 とくにシャンプーをすすいでくれるところ。 温かいお湯と、頭をくるくると優しく撫でられるのが、とても気持ちがよか…

母と兄からの、からかい

母は、口が悪い人だった。 ブラックユーモアというのでもない。 ユーモアの部分がないから。 でも、母的には ブラックユーモアのつもりだったのかな。 私は肌の色が黒くてみっともない、 って、よく言われていた。 産まれた時は赤銅色の猿だった、って。 髪…

弟のいる生活

茨城に引越して、 母が家にいるようになって、 鍵っ子じゃなくなったのは 単純に嬉しかった。 だけど、母のもとには赤ちゃんがいた。 母は完全に赤ん坊に取られた。 赤ちゃんは可愛くて 私も抱っこしたり、お襁褓を替えたり。 自分なりに出来ることはしてい…

幼児期

千葉にいた頃は 一人でいた記憶が多い。 近所の路地で、 チンドン屋さんや酔っ払いの真似をして ふらふら歩いていたこと。 仲良かった友達が引越してしまって 悲しくて、そのアパートの門の辺りで ずっと泣いていたこと。 泣いていたら、次に住む家族が引越…

弟の誕生

私が七歳のときに 弟が産まれた。 同じタイミングで、父の会社が 千葉から茨城に移った。 母は、初め父に単身赴任してもらおうと思っていたらしい。 けれど、弟が産まれたことによって 家族で茨城に引っ越すことになった。 父は、弟が家族の絆を繋いでくれた…

父の苛立ち

私の仲裁をきっかけに、 両親の喧嘩は止んでいった。 母が仕事にのめり込み始めて 父への怒りを手放したからかもしれない。 母は仕事に一生懸命だった。 先に書いたように、父の収入を上回る勢いだった。 今度は、父が苛立ち始めた。 母の帰宅が遅いことを責…

母の古いノート

母の古いノートには、小さな私の話もあった。 「ちゃーちゃんのバカ!」と真っ赤になって怒る私。 お人形に向けて、「なにか悪いことしたでしょう? なんにも悪いことしてないよ」と一人芝居する私。 そんな私を可愛いというような、短いスケッチ。 母の目か…

両親の喧嘩

私が小さい頃、両親はいつも激しい喧嘩をしていた。 母が私を妊娠中に、父がしたある事を、母は許せなかった。父を責め立てていた。何度も、何度も。 私はハラハラしながら見ていた。兄は慣れっこになっていて、どうせすぐ仲直りするよ、と、自室に戻ってい…

母の仕事中に、軽く交通事故

私が幼稚園に入ってからは 母は生命保険のセールスレディになった。 母の古いノートが残っていた。 いくつかの詩と、 昔の友人に生保を勧める手紙の下書きが残っていた。 熱心に取り組んでいたようだし、 一時期は父の収入を超えそうになるぐらい 成績もよか…