父が激怒する理由がわからなかった。
最初、怒鳴り声を上げられたときは、
私はポカンとした顔をしていたと思う。
何が起こったのか、本当に理解できなかった。
しばらくして、
成績が良かったことを叱られた、
ということを理解した。
私が驕っていたからだ。
自分でも、気づかないうちに。
・・・得意に思ったことは本当だけど、
そんな怒鳴られるようなことだろうか、
と、これもわけがわからなかった。
ただひとつ、
「優しいことの方が大切」
と言われたことは、わかった。
勉強よりも性格がいい方がいいのだ。
でも? と、私は思った。
昔、人に優しくしたときは、
偽善者だといって家族で笑ったではないか?
仲間外れにされている友人を救おうとした時。
車に轢かれて道路でぼろ雑巾のようになっている
猫を救おうとした時。
交換日記を取り上げて、読み上げて、
「コマクサが偉そうに、こんなこと書いてる」
と、笑ったではないか?
「猫が可哀そうなんて偽善だ。
お前だって肉だって魚だって食べるだろう」
と、言ったではないか?
私は、何を目指せばいいのかわからなくなり、
一人、途方に暮れていた。